私と結婚してください。



家の中に入っても、お母さんは凰成のためにせっせかと飲み物や食べ物をセットしていた。

凰成はそんなことには気にも止めず、リビングに飾られた私たちの子供の頃の写真をのんきに見ていた。


「お前らってさ、ガキの頃からあんま似てねぇのな」


「あー、うん。
小学校前はお母さんが二人一緒の服とか買ってきて同じにしたりしてたけど
小4くらいから椎依がオシャレに芽生えて、それからはあんまりかも。」


「なんで急に洒落付いたわけ?」


「その時の椎依の家庭教師がかっこよくて、椎依が恋に落ちた。」


「へー。
希依は好きになんなかったわけ?」


「んー、私は昔からそういうのにあんま興味なくて、しかも椎依が家庭教師の日は私も習い事で家にいなかったから、会うこともなかったしな。

その頃というか、なんなら去年までとにかく遊びとかより好きなことを好きなだけしていたいって感じだったから友達と遊ぶとかもあんまりしなかったかなぁ。

凰成とか習い事めっちゃしてそうだよね」


「俺?俺はそうでもねぇよ。
ただ竜司も伊織も頼もあんま暇なやつじゃなかったから結局俺も家でやるしかなかったって感じ。」


「あ、そうなの?
じゃあ今みたいな状況は高校入ってからとか?」


「そ。寮に入ってからだな」


へぇー…、でも結局家でやってたって、その程度で学年一位の成績なわけで、あの運動神経なわけでしょ?羨ましすぎなんだけど。

……まぁ、私は勉強は椎依ほどやってこなかったしな…
たぶん今でも私より椎依のが頭いいし……


「ってか習い事ってピアノ?」


「え?……あぁ、あのピアノは椎依の。
ピアノは椎依がやってたの。」


リビングを出て階段を少し登った中2階にどーんと置かれたグランドピアノ。
本当は私もやってたんだけど…早く挫折したんだよね。

椎依がうますぎて、比べられる私が嫌になったんだ。


なんでもかんでも椎依のがうまくできるこんな関係がちょっと嫌だったんだ。



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