私と結婚してください。



「あいつがピアノとか意外すぎだな」


「え、そう?結構…というかかなり上手だよ。
あとでたぶん弾くし、聴いてみなよ。」


コンクールもよく入賞してたしな。
私も子供の頃から椎依のピアノが好きで好きで、暇なときはよくあの中2階に椎依と居座ってたな…


「ほら、ケーキ出来たよ。
食べよ!」


「どう考えても市販だろ」










お母さんが用意したおやつをしっかり食したあと、椎依に頼んでピアノを弾いてもらった。
この中2階で椎依のピアノを聴きながら、このソファに座って、お母さんが淹れてくれる紅茶を飲むのが私の至福の一時だ。


なにより……


「お前、いっつもそうやってピアノ弾いてりゃもっとモテそうなのにな」


椎依がピアノを弾く姿が幸せそうで、可愛くて、可憐で、私まで幸せになる。


「別に、モテたくてピアノやってるわけじゃないから。
そういう道具にはしない。ピアノは、絶対に。」


そういってまた違う曲を弾く椎依。
この音色が紅茶を美味しくさせる。


「……希依、本当に好きなんだな。
こいつのピアノ」


「ふふ、うん。
椎依の楽しさが伝わってきて、私も楽しくて幸せ。」


うまくいかなくて苦しんだ時期も知ってるけど、それでも弾けるようになったときの喜びが溢れる椎依を見て、
自信満々に弾いてる椎依を見て、

私も、幸せな気分に浸れる。


これは双子だから
私の分身だからなのかな



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