私と結婚してください。
「……婚約者?」
「ま、そんなとこだね。」
「ってことは、私が姫になった日に言ってた『凰成に好きになってもらった方が…』みたいなやつが嘘か。」
「うっ…、よく覚えてたね…
ってか気にするとこそこ?」
なんて竜司くんは苦笑いしてるけどさ
そんなとこを気にしないと、心の中に留めてる戸惑いが表面に出てきてしまうから。
どうしてこんな戸惑いがあるのか?
これはなんなのか?どうしたらいいのか?
そんなことを考える余裕すらもなく。
「ま、あの頃は凰成の姫にしといて、あとで嫌になったときに俺の姫にすればいいやーって考えだったから。
今思えばちょっとひどいよね。」
我慢してる。
私の表情からなにか出てしまいそうで
泣きそうで、笑いそうで、よくわかんない脱力感に襲われて
気をはっていないとなにかが出てしまう
そんなよくわからない私の心情を悟られたくない。
なんでかわからないけど、表面から出しちゃいけないものなんだ。
「希依、終わったか?
……どうした?」
そんなよくわからない感情が表情から漏れないように強張った表情をする私を見て、凰成が笑う。
めぐと一緒に出ていったこいつがめぐと一緒に戻ってきたんだ。
「返事、また聞かせてね」
もういろいろどうすればいいかわからない私の耳元でこそっとそういう竜司くんは立ち上がって部屋を出ていった。
「……凰成、帰りたい」
「え、俺はいいけど…父親には会っていかなくていいのか?」
「どうせ会えないし。
……お願い。」
「…わかった」
明らかにおかしい私を見て、凰成はなにも言わなかった。