私と結婚してください。
「どうぞ」
人数分入った紅茶を、みんなが座るソファのサイドテーブルへと置いていく。
「ありがとね、希依」
姫であるめぐも、当たり前かのようにね。
「……どういたしまして」
「希依さん、ちょっとよろしいですか?」
「あ、うん」
主人たちに紅茶を置くと、メインのソファから離れた部屋の隅にある小さな机と足の長い椅子のところにいる頼くんに呼ばれた。
「なに?」
「よろしければ話、お聞きしますよ」
優しい笑顔に、優しい口調
こちらからなにも言わなくても私の心を悟ってくれる頼くんが本当に優しくて、貴重で……
ここでは主人が一番、私たち姫はそんな主人に尽くすためだけに存在するのに
この人は私を『友達』として扱って、私のことまで考えてくれる。
そんな関係が、本当に貴重だったんだ。
「……ありがと。
ついでに勉強も聞いて良い?」
こんなにレベルの低い私にも、頼くんは快い笑顔で
「もちろんですよ」
いつもとびっきりの優しさを私に提供する。
私にもいつか、この人の役に立てるときが来るのだろうか。