私と結婚してください。
頼くんの言った『課題』というワードをこの人たちも拾い、私たちも勉強タイムとなった。
私一人、わざわざ部屋に戻って凰成のタブレットをとりにいって、ここで一緒に。
当然のことながら私は仲間に入れず、さっき頼くんと座っていたテーブルに座ってタブレットをつけることもせず、3人に背を向けていた。
前に竜司くんに教わったおかげで私だけが課題を終わらせていたから。
……ま、補習で出された課題はまた別であるんだけどね…
私一人でできるわけもなく。
一足先に終わらせた凰成はめぐに教えてるし……
━━━仲間はずれ、だよ。完全に……
もうこの部屋にいたくなくて
「…夕食の支度をしてきます」
それだけいって、荷物をもってこの部屋を出た。
凰成も私には興味ありません、って感じだし。
……凰成の口から『私が姫でよかった、私じゃなきゃダメだな』って聞いたけど
やっぱり私は所詮姫でしかなくて、友達って立場のめぐには敵わなくて、私以外の5人が友達同士に対して私だけが『姫』っていう立場だから
頼くんもいろいろ言ってくれたけど
どうしても、仲間に入ることはできなかった。
━━━コンコン、
私の逃げられる場所なんて限られてるんだけどさ。
「はい。……希依さん、どうされましたか?」
私のことを『友達』と言ってくれた頼くんにしか、頼ることはできない。
「……あの、補習の宿題ができなくて…」
「……吉良さんはどうされましたか?」
「凰成はめぐに教えてたから」
こんなの甘えかもしれない。
姫の立場で主人放置して別の主人の部屋に来て、他の姫に頼るなんて…
……でも、今の私にはこれが精いっぱいだったから。
「…先程伊織様はお出掛けになられたので、この部屋では私と二人きりになりますが、それでもよろしいですか?」
伊織くん、出掛けたのか。……あ、玲子さんのとこか。
「……それはさ、私が女の子だから聞くの?」
「はい。私も男です。
伊織様もいらっしゃると思って訪ねられたのに、私しかいなかったら不安もあるでしょうし…」
「ふふ、全然大丈夫だよ。
頼くんがそういうことする人には全く見えないし、なんなら女の子扱いされて嬉しいもん」
頼くんが凰成みたいなことをするとは思えない。
この人は人を大切にする人だから。
「それに、頼くんとは二人きりで話したいこともあるしさ。
伊織くんにはちょっと悪いけど。」
今だけは、伊織くんがいなくてよかった。
「……では、どうぞ」
「お邪魔しまーす」
はじめて入る、伊織くんの部屋。
あのドアの向こうが頼くんの部屋だろうけど、頼くんは頼くんなりの配慮なのか、伊織くんの部屋へと私を通した。
ここなら凰成も自由に出入りできるから。
「紅茶を淹れますね」