私と結婚してください。
「よし、課題も片付いたし
とりあえず荷物持ってくる。着替えもないし。
その間に竜司くんも着替えておいて」
「ん、了解。
じゃあ伊織からもうすぐ行くって連絡しとくね」
「うん、お願いします。
じゃあちょっと行ってくる」
あれから30分
さすがにもう凰成とめぐはいないはず…と思い、私は躊躇なく凰成の部屋の扉を開けた。
朝までこの部屋で凰成と過ごしていた。
あれから全然時間はたっていないのに、なんだかものすごく懐かしく思えてきて
そこに掛けられためぐの制服が、もうここは私の居住スペースではないと言っていて
胸が、締め付けられた。
溢れそうな涙を拭い、私は自分の部屋…だった扉を開けた。
「__っ、凰成…」
「…希依か」
まだ私の荷物が多く残るこの部屋に、めぐの荷物が運ばれてはいなくて、まだ私の部屋のままだったここに、凰成が立っていた。
「に、荷物取りに来て…
…めぐは?」
「……先外いった。
俺は忘れ物取りに戻っただけ」
「……忘れ物?」
この部屋に?
で、でもこの部屋に凰成が入ったのだって、本当に数少なくて
凰成の物なんかなにもないのに…
「今日、何の日か覚えてるか?」
「今日?」
今日…は、……あっ…、
「…私の、誕生日……」
「ってことで、プレゼント」
「・・・えぇ!?嘘!!」
「・・・声でか」
凰成の手には、小さな紙袋がひとつ。
まさか、凰成が私の誕生日を知ってるとは思わなかったし
そもそも凰成が私にプレゼントを用意するなんて思わなかったし
もっと言えば、この人がそういう記念日にプレゼントをあげるような人だとは思ってもいなかったから
「……感激」
もう、言葉には表せなかった。
「いやなんかもっとまともなこと言えよ」
「ありがとう!!」
全力でお礼を言うと、凰成は一瞬真顔のまま固まったけど、そのあとフッと笑った。
「希依はここに来た頃と変わらないな」
「え?」
「それ中身見てもいいけど竜司と頼には見せんなよ」
「え、なんで?
ってか伊織くんはいいわけ?」
「伊織はどっちでもいいけど、まぁでも頼が絶対いるだろうから伊織も自動的に無しだな。
とにかく、見るのはいいけど身に付けたり、見つかったりすんなよ」
・・・なにそれ。
どんなプレゼントなんだよ…
「……はいはい、わかりましたよ」
「荷物多いけど頑張って運べよ」
……この部屋に来た頃は、全部凰成がやってくれたのにな…