私と結婚してください。



結局、一度も私の視界が晴れることはなく、15分ほど走ったところで車は一度止まり

「少々お待ちください」

といって、頼くんが一度車から降りた。


ほんの5分ほどして頼くんが戻り、また車は走る。


その間も会話は一切ない。
ずっとペンの走る音だけが聞こえて、3人の会話に私は入ることはできなかった。


そしてまた15分ほどして、車が到着したようで

「希依さん、手を失礼します」

涼しい空気が触れたと思ったら、すぐにたぶん頼くんが私の手を握った。


「えっ、このまま降りるの?」

「はい、すみません」


すぐ横に聞こえる頼くんの声。
…まぁ、確かにここで目隠しはずしたら、本当に頼くんの家に寄るためだけに目隠ししたようなもんだもんな…


「車イスをご用意いたしましたので、希依さんはそちらに乗ってください」


頼くんが手を握って、私を車からおろしてくれるわけだけど、他の小さな車と違って広々したこの車を見えない状態で降りるのは恐怖だった。


「うわっ」

「ちょ、あぶね!」


車から降りるとき、思ったより早く地面に足が着地したせいで、私は思いっきりバランスを崩して
かと思えば、頼くんとは反対側から伊織くんの声が聞こえてきて、私の腕が掴まれた。


「あ、ごめ…」

「気を付けろよな~」

「……なんか伊織くんに言われるとむかつく」

「うわ!俺が支えてあげなかったら転ぶかもしれなかったのにひど!」

「はいはい、ありがとうございます」

「希依さん、後ろに車イスをつけました。
そのままゆっくり腰をおろしてください。

伊織様も、そのままサポートをお願いします」

「おう!」


……伊織くんは不安だけど
でも頼くんに言われた通り、私はゆっくりと腰をおろしていくと、無事なにかに座ることができた。


「足置きをだしますので、少し足を上げてください」


もう、ここからは頼くんの言われた通りにする。
すべてを頼くんに委ねる。頼くんなら大丈夫。

……と、安心したのも束の間


「俺が押す!!」


不安な人が、声をあげた。


「はい、どうぞ」

「え!?伊織くんが押すの!?」

「もうコツ掴んだから!
行くぜ、希依ちゃん!!」

「ゆ、ゆっくり…、」


……なんて、私の言葉が届くはずもなく


「うわっ…」


予想より、遥かに勢いよく車イスが動き出した。


「い、伊織くんゆっくり!!」

「えー?全然普通だから!」


本当かよ!怖いわ!
もうがっつりしがみついてないと落ちそうで怖いよ!!


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