私と結婚してください。
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「とうちゃーく」
つ、ついたか…
あれから、エレベーターのために止まったりするときが本当に恐怖だったけど、竜司くんが
「止まるときはゆっくりの方がいいんじゃない?」
という助け船出してくれたおかげで、止まるときはなんとか普通で…
カチャン、という鍵の開く音がして、
「動くよー」
私は、また伊織くんによって動かされる。
……けど、待て。待てよ?
凰成の部屋って、入ってすぐ段差なかった?
小さな段差だけど…土足はそこで脱ぐじゃん
前怪我したときだって、車イスはそこに置きっぱにしてたじゃん。
え、ちょ
このまま行って大丈夫?ガン!とか当たるよ?
え?
なんて心配していたのに
「遅かったな」
と、のんきな凰成の声が聞こえてきて
カチャン、とドアが閉まる音がして
「希依さん、アイマスク取って大丈夫ですよ」
という頼くんの言葉に、私はアイマスクを取った。
「・・・え?」
そこは、真っ暗な空間だった。
真っ暗で、頭の中が空っぽになった瞬間
バンッ!バンッ!
「きゃあぁぁぁぁ!!」
大きな破裂音が複数回聞こえて、驚いて私は思いっきり叫びながら崩れ落ちた。
もう状況を理解することができなくて、頭が空っぽ。
と、思ったらいきなり大きなピアノの音が聞こえてきて、私の体はまたビクン、と反応する。
だけど、それはとても聴き馴染みのある曲で…
そして、それと同時にパッと明るくなった部屋。
最初は眩しくて仕方なかったけど…うっすら見えるこの景色は見慣れた凰成の部屋なんかじゃなくて…
元気に『ハッピーバースデイ』を歌う伊織くんと竜司くんに合わせて、向こうから運ばれてくる大きな大きなケーキ。
それを運んでくる人すら、私は誰だかわからない。
でも、ここには確かに
凰成がいて、竜司くんがいて、伊織くんがいて、頼くんがいて、めぐがいて
…向こうで、ピアノを弾く椎依がいて……
「大丈夫ですか?」
「頼くん…これ、なに…」
差し出された手を握り、立ち上がると
目の前のテーブルにはしっかり豪勢なごちそうが並んでいた。
「見ての通り、バースデイパーティーですよ」
笑顔でにっこり頼くんがそういうと、演奏が終わった。
「は~、全く
なんで自分の誕生日に自分で演奏しなきゃならないのよ」
「祝ってやるだけありがたく思えよ」
「別にあんたに祝ってもらう義理はないわ」
・・・なんか私の妹は凰成と言い合いしてるけど…
「……ここ、どこ?」
もう私はそれどころではない。
この状況がまったく掴めていない。
「どこって、言った通り凰成の部屋だよ」
「え?」
「正式には、凰成の家の、凰成の遊び部屋だけどね」
……凰成の家の?
ってことはここ、学園内じゃないってことか…
そう、だよな…
こんな広々したとこ、学校にはないよな…
「……え、でもさっきエレベーター乗ったよね…?」
「はい。
吉良家は地下3階地上3階の6階建てなんです。
ここは地下1階、吉良さんが友人と遊ぶ専用のお部屋となっています。
先程、1階からこの地下1階へと降りてきたのです」
・・・地下…すっご。豪邸…
あ、当たり前だけど…