私と結婚してください。
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「凰成、姫は真剣に選べよ」
「それ何度目だよ」
別に、俺に姫なんて必要ない。
俺には頼がいれば十分だ。
いちいち干渉されるのは、好きじゃない。
「何度でも言う。
姫だけは、絶対に妥協するな。
ちゃんと見極めるんだ。
これから先、お前が守るべき人になるんだからな」
「はぁ?
ただの世話人だろ。姫なんて」
「そうだな。
お前が一人前になるために、精を尽くすのが姫の役目だ。
だがな、そこから先
お前が一人前になったら、今度はお前が守る側になる。
それを絶対に忘れるな」
「…はぁ?」
「そんな姫を守れるように、一人前の男になれよ。凰成」
「……意味わかんね」
姫なんて、ただの世話係だろ。
なんで俺が守る側になるんだよ。意味不明。
「そのうち、お前にもわかる時が来る。」
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3年に上がる前、俺が神楽入りと正式に決まった日に、親父はそんなこと言ってたっけ…
あんときは意味不明だったけど
姫なんて、ただの使用人でしかないと思ってたけど
……姫を守れるように、一人前の男になれ、か…
なんであんなしつこく言ってたのか
今の俺ならわかるようになったよ、親父。
『あなたを守るのは、私の役目ではないから』
…そういった、母さんの言葉の意味もな。
『私はお父さんを支えるためにいる。
だから、私はもう凰成のお母さん業を辞めます。
その時が来るまで、凰成は空っぽのままいなさい。』
そういって、俺のことを放った母さんの気持ちが、今ならわかる気がする。
主人と姫だった両親だからこそ、だったってことだよな。
一人前の男になったから、今度は姫を守る側になる、か
「…俺さ」
「ん?」
「やっぱ、希依は竜司には譲れねぇわ」
「え?」
あいつは、俺が守りたい。
あいつを守るのは俺でありたい。
だから、俺はあいつの主人を降りるわけにはいかない。