私と結婚してください。
音楽のあとはそのまま昼休み。
私たちは早めに食事を終え、そのまま食堂で私はめぐの譜面に音階をふっていく。
「……ん、これで終わり」
「まじで感謝!ありがとう、希依!!」
「どういたしまして。
でもピアノは両手だし、初心者には難易度高い曲だからめぐも大変だよね…」
「本当だよ!ピアノなんてこれが人生初だからね!
鍵盤触るのだって、鍵盤ハーモニカ以来なんだから!」
おいおい、それじゃ小学生ぶりってことですか…
そうだよなぁ、めぐはなんてったってバスケ一筋だったから…
「なんかコツとかないの?」
「コツかぁ…
コツっていうか、私は先に右手だけ完璧にできるようにして、次に左手、最後に両手ってしてたかなぁ…
慣れるといきなり両手でも大丈夫になるけど、最初は1つずつやってたよ!」
食べ終わっても、ずっと食堂に居座り、ひらすらそんなことを話していた。
伊織くんと頼くんも、ここはこうしようとかここはこうしたいとか、ずっとそんな相談をしている。
……凰成なんて、1人で黙々と音符ふってるからね。
バイオリンはピアノよりも音を刻む曲だから、まだ5小節目
見てるだけで気が遠くなってくよ…
そんな凰成を見て、伊織くんはまたバカにしてたしね
「ってか凰成音符読めねぇしバイオリン超下手くそだし、まじで今回の音楽やべえんじゃね!?」
「……伊織、そろそろ黙んねぇと俺の拳が吹っ飛ぶからな」
「いやー、凰成とめぐちゃんのコンビ、本番を見るのが楽しみだな!」
「伊織様、いい加減にしましょう」
結局、今日も頼くんがこの主人を止める。
これはこれで、頼くんも本当に大変だなあ…
「あー、まじ終わんねぇ
音楽俺捨てるわ」
なんて、凰成がペンを捨てた。
「……仕方ないなぁ…」
私は必要な分の音階を全て書いて凰成に渡した。
このままじゃ、せっかくの私の一番の得意科目なのに私の成績まで下がってしまうから…
「ん、これ参考にやりなよ」
「……なんで西島んのは書いてやって、俺のはこれなんだよ」
「めぐは友達、凰成は主人だからでしょうが。
めぐはこの先わかんなくても苦労しないだろうけど、凰成は一般知識として覚えておくべき。
だから、これも絶対自分でやるべきなの」
「……ったく」
凰成は渋々だけど、またペンを握った。
頑張るしかないんだ。最初は大変だけど…今後のためにも、覚えて損はないはずだから。