私と結婚してください。
あ、そうだ。
さっきPHSなんだったんだ…?
階段を降りながらPHSを確認すると、凰成からのショートメールだった。
えーと、なになにー?
『抜けていつものとこに来い。抜けやすいように頼に協力させるから、外に出たらそのままいつものところに来い
待ってる』
え、え?
ってことはさっきの椎依が下で待ってるっていうのは頼くんの嘘…?
え、いつもの場所…?
__あ、お昼ご飯食べてたところかな?もしかして…
もうそこしか思い付かなくて
凰成が待っているとわかった途端、私の階段を降りるスピードは一気に上がる。
早く会いたくて
またあそこで2人になりたくて
もう、完全に走っていた。
まだ制服姿だけど、そんなこともお構いなしに階段を全力で駆け降りる。
そしてちょっと遠い校門を出て、すぐそこの川へと急ぐ。
あの川の、あの橋の下。
あそこが、私と凰成のいつもの場所だ。
「はぁ…はぁ…、いた…」
「……なんでそんな息きれてんの?」
「だって…急いだから…」
全力で走ってきたから、凰成を見つけてすぐ私は呼吸を整える。
凰成に近づくこともせずにね。
「はぁ…、疲れた…
なにか用?」
「……これ、合ってるか確認」
「え…?」
出されたのは、音楽のあの譜面だった。
「え、もう終わったの?
昼休みは半分くらいしか出来てなかったのに」
「……希依があれ、書いてくれたからな」
うわー、まじか。
でもすごいじゃん。この短時間で全て書き終えるなんて。
「オッケー、じゃあ確認するね」
そういって私はいつも通り、凰成の横に座る。
もうこれも本当久しぶりで…たった半月くらいのことだけど、すごく懐かしく思えた。
「……ん、全部合ってる。
すごいじゃん」
「…まぁ、希依の成績に傷はつけられないからな」
「ふふ、そっか」
一応、気にしてくれてたんだ。
いつも私が足を引っ張ってばかりなのにね。
「凰成のバイオリンかぁ。
すごい似合いそうだよね!」
竜司くんも尋常じゃないくらい似合ってたけど。
…たぶん、竜司くんを越えるほど似合う人はいないと思うけど。
それでも、この容姿にバイオリンは反則だ。
絶対かっこいい。
「…いや俺、バイオリン苦手なんだよ」
「……え、そうなの?」
「まったく音でねぇ」
「え、嘘。そういうレベル?」
「たぶん、希依が思ってる以上にひどい」
う、わぁ…まじか。
凰成にも苦手なことってあるんだな…学校だと常に完璧だから、なんか想像できないんだけど…
「…じゃあ、この時間にも練習した方が良くない?
音楽室いく…?」
「……いや、俺西島といても上達する気しねぇし」
「まぁ…めぐも音楽って苦手だしな…」
「…希依さえよければ、今から俺んちいかねぇ?」
「え、凰成の家?え、いいの?」
「おう、いいよ」
「い、行きたい!!」