私と結婚してください。
勢いよく凰成の家に行きたいと言った私に、凰成はふっと笑ってすぐに車を手配した。
10分程で到着したいつもの車に乗り込み、今度はしっかり凰成の家までの道中、外を眺めていた。
時に凰成とおしゃべりをしたり…誕生日の時と違って、15分ほどの時間もあっという間に過ぎていった。
「うわ、すご…」
「は?」
「前は帰るとき暗かったからよく見えてなかったけど…
やっぱ、すごい豪邸…」
もうすぐで到着する。
……でも、すでに窓の外には吉良邸が見えている。
柵の向こう側に広がる広大できれいな庭園。そしてその向こうにあるお屋敷。
『お金持ち』なんて言葉では言い表せないくらい、この人はしっかりセレブだ。
外を見つめていれば、向こう側にある大きな門が開いてるのが見える。
ゆっくりと、でも豪快に。
そしてこの車が停止することなく、吉良邸へと入って行く。
「……あれ、あっちじゃないの?」
「あ?あれは倉庫」
さっき、車の中から見えた建物が家かと思えば、あれは倉庫って…
いやあれだけでうちより大きいんだけど。立派なんだけど。
うちも普通より大きい方なのに…
そしてしばらくして車は止まった。
凰成の向こう側を見れば、さっきの倉庫よりも遥かに大きくここからじゃ全貌が全く見えない建物の前に車がつけられ、驚いてる暇なく凰成のところのドアが開けられた。
「降りるぞ」
「う、うん…」
車から降りる凰成に続くと、先に降りた凰成が降りようとする私に手を差し伸べた。
「ん。」
「あ、りがと」
……本当、出会った頃とは大違い。
あんなに俺様だったのにね…
なんて感心して車を降りると
「おかえりなさいませ」
と、多くの人の出迎えがあった。
勝手な私のイメージでは、メイドさんとか執事さんが多いかなって感じだったけど
実際見てみると、ここにいるすべての人がスーツを着た男の人だった。
若い人から、それなりに年を召された方まで様々で…
「俺の部屋に飲み物を」
歩きながら、ひとりの男の人にそれだけ言って凰成はさっさと屋敷の中に入っていく。…私の手を握ったまま。