私と結婚してください。
「…希依」
「ん?」
「それ、やる」
「…ん?」
「だから、お前が持ってるそれ、やる」
「・・・はぁ!?」
「声でか」
ちょ、こいつ何て言いました?
それやる?
え、これですか?私が持ってるこれですか?
世界に数台しかないバイオリンの名器、ストラディバリのことですか?
「…い、いやいやいや!!
何言ってんの!!これいくらすると思ってんの!!
こんなんもらったらうちの親倒れちゃうから!!」
「…大げさ。
しかも俺が持ってても仕方ねぇし」
「それでもだめ!!
もしかしたら、これから凰成が結婚する人とか、生まれてくる子供とかがバイオリン好きかもしれないじゃん!!
これは吉良家でしっかり保管しなさい!!」
私がそういうと、凰成は私を見つめた。
そして、今度はしばらくこのバイオリンを見つめ
「…わかった」
ちゃんと、わかってくれた。
「ん、よかった」
「その前に、希依が弾いてみてくれよ」
「え、これを?」
「そう。
好きな曲弾けよ」
なんで?どうして?
その理由はわからなかったけど、もう一生触ることないかもしれない、ましてやこれで演奏するなんて今まで無縁だったわけで…
バイオリンを愛してる私からしたら贅沢すぎる話で
「…じゃあ、今回の課題曲ね」
迷わず、私はこれを弾くことにした。