私と結婚してください。


***


「___ん、こんな感じ。
そんな難しくないから練習すれば大丈夫だよ」


一通り弾いて凰成にそういっても、凰成は5秒間ほど真顔のまま動かなかった。


「…凰成?」

「あ、わり。
…たまには真面目に練習してやるか」

「うん!
凰成は器用だからすぐできるようになるよ!」

「…そ。」


あ、笑った。
ふわっと、ふっと、笑った。

なんか、久しぶりに見たなぁ。
めぐに対してとか、伊織くんに対して笑うことあるんだけど
こう、優しそうな笑顔は久しぶりだ。


「じゃ、まずは姿勢からだね!」

「…そんなとこからかよ」


その笑顔のためなら
その笑顔がまた私に向けられるなら

私は、まだまだ頑張れちゃうよ。



< 248 / 419 >

この作品をシェア

pagetop