私と結婚してください。
「あ、希依おかえり」
部屋に入れば、相変わらずソファにはめぐちゃんがまだいた。
「た、ただいま」
「めぐちゃん、凰成帰ってきたよ。
行かなくていいの?」
「えっ、まじか。
じゃあ部屋戻るかぁ。
2人ともおやすみ~」
めぐちゃんが部屋から出ていって、俺は希依ちゃんの手を握りしめたままソファに座り、希依ちゃんも座らせた。
「…どうしたの?」
「俺、今から真剣に話すから。
だから希依ちゃんも真剣に答えて」
俺がそういうと、希依ちゃんの目は泳いだ。
…もう、どんな話かわかってるのかもだけど
「俺、真剣に希依ちゃんのことが好きです。
本気で、希依ちゃんのことが好きです。
本当に希依ちゃんの幸せのためなら、なんだってできると思っています。
…だから、希依ちゃんの彼氏になりたいです」
本当に、本気でぶつける。
いつも適当な俺がこんなこと言うもんだから、希依ちゃんは最初固まった。
…でも、固まった顔がだんだん下に向いていく。
下に向いた顔は、だんだん歪んでいく。
……別にいいんだ。
わかってたことだから、別にいいんだ。
「…ごめん。
私も竜司くんのことだいすきだけど、でも…
竜司くんの気持ちには応えられません。
竜司くんの幸せのために私はきっと頑張れないんだ。
ごめんね…」
ちゃんと、希依ちゃんの本音を聞ければそれでよかったんだ。
「…終わりにしよっか」
「え、なにを?」
「姫の交換」
「え!?…いいの?
だってまだ期間あるし…」
「いいの。
めぐちゃんのピアのみてあげなきゃ音楽の成績下がっちゃうし
希依ちゃんも凰成のバイオリン、見てあげなきゃでしょ?」
「…まぁ」
「それに、フラれたのに一緒はそれはそれできついし」
はは、と自分でもわかるくらいうまく笑えなかった。
正直あまり実感はないんだけど…でも
それなりに俺も、ショックを受けてるみたいだ。
「本当、ごめんね」
「いいって。知ってて言ったんだし。
……俺の方からめぐちゃんに連絡しとくから、希依ちゃんも荷物まとめときなよ?
明日の朝、凰成の部屋戻んな」
「うん。
……じゃあ、短い間だったけどお世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ」
こんなことで希依ちゃんの笑顔が見られるなら
希依ちゃんが幸せになれるのなら
俺は喜んで身を引くよ。