私と結婚してください。
「なに、なんなんだよ
なんかあるならちゃんと言ってくれよ」
「…だって、言いたくないんでしょ?」
「は?なにが」
「だから、玲子さんのこと!
言いたくないなら話すことなんてないよ」
「そんなに気にすることかよ」
「気になるよ!…凰成が好きだった人のことだもん。
ちゃんと知っときたい…」
私がそういうと凰成はハァーー…と、長めのため息をついた。
「別に大したことじゃないから話す必要ないと思っただけ。
そんな気になるなら話すから座れよ」
手を握って、私をまたソファへと座らせた。
「正直あの頃ガキだったし好きとかもいまいちよくわかんなくて
好きって言われても『あぁ、そうですか』って感じだった。もちろん付き合いは長かったから玲子がどうでもいい存在ではなかったけど
だからこそ付き合ったからってなにか変わるわけでもなくて
まぁ、玲子はそれがすげー不満だったらしくて、いつの間にか終わって、いつの間にか伊織と付き合ってたってだけ」
「え…それだけ?」
「そう。
付き合ったからって2人で出掛けることもなかったな。それを頼に指摘されたこともあったけど、俺的にはみんなといた方が楽しいと思ってたから出掛けるどころか2人きりになることもなかったな。
ただ」
そこまで話すと凰成の目線はこれまでと違って、急に下がって…
「俺と別れてすぐ伊織と付き合ったし
伊織といるときは俺には見せない顔してたし
俺のこと好きとか嘘だったんじゃね?とは思った」
そう話す凰成の顔は本当に寂しそうで
そんな顔、普段私といるときは絶対に見せない表情をしていて
「まぁあいつの本音なんて俺にはわかんねぇけど」
本当はまだどこかで
その頃のことを引きずってるのかなって
そう思ってしまった。
「…それだけ。話終わり。
明日休みだし映画でもみるか」
凰成はそういって、そこのDVDをあさったけど、私はそんな気分にはなれなくて
「…私はやっぱり寝るね。おやすみ」
「は?もう寝んの?」
「ごめん、眠くて」
それだけ言って部屋に入って鍵を閉めた。
…自分から聞きたいって言ったのにね。
まさか、玲子さんの話をする凰成が、あんなに寂しそうだとは思わなかったな…
好きとかよくわからないって言ってたけど、きっとちゃんと好きだったんだろうな…