私と結婚してください。
「うわー、気持ちいい朝…」
ひんやりとした空気に、綺麗な空。
鳥たちのさえずりがなんとも心地いい。
「敷地内の散歩でも、気分転換には向いてるんです」
「わかるなぁ、それ。
誰もいない校庭もなかなかみれないもんね」
校庭だけじゃない。校舎も、寮の方も、誰も人がいない。
すんごい心地いいな、これ。
「たまに先生にも会いますけどね」
「え、日曜日なのに?」
「部活動があると出勤されるのでしょう」
「あー、なるほどね」
先生かぁ…そういえば神楽に来てから普通科の先生たちと一切面識ないや…
まぁ理数科の先生も全然知らんけど。
「そういえば希依さんはなにか考え事ですか?」
「あー…うん、ちょっと昨日から。
…頼くんはさ、伊織くんや凰成たちと小学生の頃から仲良いよね?」
「はい、そうですね」
「実は昨日さ、玲子さんから
凰成と付き合ってたって話を聞いたんだけど」
「あー…そうですね。
遠い昔の話ですが」
「どうだった?あの2人。仲良かった?」
「はい、仲はよく見えました。
ただ恋人っぽくはないというか、友達の延長戦のような関係だったので、それほど気にされることはないかと思いますが…」
「うん、凰成も玲子さんもさっぱりしてた。
でも…昨日凰成から話聞いてたら、凰成は最後少し寂しそうな顔してて…
そういう顔、私はみたことなかったから」
本当は、玲子さんが伊織くんに乗り換えたのがショックなんじゃないかって…
もしかしたら本当は玲子さんのこと、すごく大事だったのかなって
ちょっと、不安なんだ。
彼女になれたくせに欲深くて、私だけのことを想ってくれたらいいのに、って…
「そうですね。同じ表情を希依さんに向けることはないと思いますよ」
「そ、そうだよね」
まさかの肯定…でもそうだよね。
あの2人、付き合い長いもんね…
「でも落ち込むことではありません。
私も、希依さんに出会ってから吉良さんの変貌ぶりには驚いているのです」
「え?」
「吉良さんは希依さんと出会ってから、毎日がすごく楽しそうです。
あなたとの時間が楽しくて、寂しいなんて気持ちはもうないのでしょう。
強いて言えば、希依さんが神崎さんの姫をやっていられた頃は寂しそうでしたが
希依さんがそばにいれば、吉良さんが寂しいと感じることはきっとないと思います。
吉良さんがあんなに楽しそうで、優しくなられたのは希依さんと出会ってからです。
あなたは吉良さんの特別な方です。
吉良さんの特別な表情ばかりをみてきたから、寂しそうな顔を見たことがないだけなんです。
希依さんに出会う前の吉良さんは、常に寂しそうでしたよ。
決して落ち込むことではないのです」
凰成の、特別な表情ばかりをみてきた、か…
私と一緒にいるときは楽しいと思ってくれてるのか
……そっかぁ。