私と結婚してください。



「吉良さんのご両親もかなりの放任主義なので、吉良さんはずっと寂しかったんだと思いますよ」


ずっと寂しかった、か…
そういえば前に、1人のご飯は美味しくないって辛そうに話してくれたもんな…


「…あ、そういえばこの前凰成のお父さんと会ったんだけど
すごく優しそうな人だったけどね。
そんな凰成を放っておいたなんて、なんか信じられないや…」

「吉良さんのお父様に会われたのですか?」

「うん」


頼くんはその事を聞いて、すごく驚いた顔をした。
そんなにビックリするようなことなのか…


「…吉良さんのご両親は、吉良さんが大切な人を見つけられるよう、あえて見放していたのです。
ですが吉良さんと希依さんの前に現れたということは
吉良さんが大切な人を見つけたと知り、認めたということなんでしょうね」

「えっ、そうなの?」

「私は吉良さんのご両親は一度も会ったことがありません。
会ったことあるのは恐らく神崎さんだけではないでしょうか。幼い頃から一緒にいますので。
玲子さんも、その後に出来た婚約までした方も、吉良さんのご両親とは会われたことはないはずです」

「えっ、え!?
婚約までしといて会わせてないの…?」

「吉良さんが認めた相手だから反対はしなかったのではないでしょうか。
ですがご両親は相手の方を調べあげていたかと思うので、本音としては認めていなかったんだと思います。
そもそも、伊織さまと玲子さんのことがあってやけくそ感がありましたからね、その頃の吉良さんは。
実際、吉良さんのご両親は日本にすら戻ってきてはいなかったですし」

「そうなんだ…
まぁ私もまだお父さんとしか会ったことないし、喋ってもないんだけどね」

「それでも、吉良さんが希依さんのことを大事に想ってることを認められたのでしょう」


そっか、そうだったんだ…
だからわざわざ、縁談話中に割り込んできたのか。


「そろそろ神楽へ戻りましょうか」

「えっ、もうそんな時間!?」


校庭の時計をみると、時間はもう6時45分。
時間がたつのはあっという間だな…


「頼くん、今日も話聞いてくれてありがと」

「いえ、私にはこれくらいしかできませんので」

「そんなことないよ!
私、頼くんがいなかったら絶対神楽でうまくできたなかったもん。
いっつも本当にありがとう」


私がそういうと
頼くんの顔はみるみる赤くなっていって


「はっ、早く戻りましょう」


こんな頼くんを見れるのも私だけだったらいいな、なんて思ってしまった。



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