私と結婚してください。



「…なんだよ、1人かよ」

「だって、凰成1人で行っちゃうんだもん…」


はぁ、はぁ…と乱れた呼吸を整えて、私は凰成の手を握った。


「1人で、行かないでよ」

「は?」

「…ちゃんと、私も連れてってよ
どうして1人で行っちゃうの」


私が問うと、凰成は私から目線をはずした。


「…お前は頼と話してたろ」

「なんで?いけない?」

「だめじゃねぇけど…」

「じゃあなに?
ちゃんと言ってくれなきゃわかんないよ」

「……お前ら見てると、無性に腹が立つんだよ」

「え?」

「お前は俺の姫で、俺の彼女じゃねぇのかよ…!」

「…え?」

「なのになんでお前はいつも頼ばっかなんだよ」


ちょっと、待って…?
凰成がやけに今日機嫌が悪かったのって、それ…?


「……妬いてる…?」

「は?焼いてるって、なん…っ」


凰成の嫉妬

もしかしたらすごくわかりやすかったのかもしれなかったけど


私には、めちゃくちゃわかりにくかったよ、バカ。
もっとわかりやすくしてくれよ、バカ。


…でも、そんな凰成が無性に愛おしく思えて、私は気がついたら駅だというのに、凰成に抱きついていた。


「ごめんね
私、凰成のそばにずっといるから」


この人は昔から、お父さんにも、お母さんにも、そばにいてもらえなかった人。

もし、私のことをやっと手にいれたと思ってくれてるなら、その期待にちゃんと応えたい。
凰成のそばに、ちゃんといたい。


「…ったく」


呆れたようなその声に、どこか嬉しそうな色がついていた。

見上げた凰成の顔は、優しい笑みを浮かべてたから。


「…に、しても
凰成よく切符の買い方知ってたね?」

「さっき頼に説明してるの見てた」

「改札も通れたし」

「周り見てたらわかるわ」

「…そっかぁ」


凰成も、着実に進歩してるんだなぁ。
今まで自分では何一つやってこなかったのに。


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