私と結婚してください。



「頼、夜道を歩いてたそうだな」

「……はい」

「どうして車を呼ばないんだ。
第一、不要な外出はするなと、寮に入る前にした約束を忘れたのか」

「いえ…」

「じゃあどうして車を呼ばずに出かけたりしたんだ!!」


その頼くんのお父さんの怒鳴り声に、私の肩はビクッと跳ね上がった。


そんな私の肩に手をおいて、私の顔を見てから、私の一歩前に出たのは
伊織くんだった。


「申し訳ありません。
俺が連れ出しました」


そういって、頼くんのお父さんに頭を下げた。


「……伊織、お前も無断な外出はするなと言われなかったのか?」

「…同じく、寮に入る前に約束をしました。
その約束を破ったのは俺です。頼は俺についてきただけです」


頭を下げたまま、伊織くんはそう続けた。
その姿を見ていられなくて


「……私のせいなんです」


私も、一歩前に出た。


「君は?」

「吉良くんの姫を務めています、高梨希依といいます。
今日、歩いていこうと言ったのは私です。
そして、車にぶつかりそうになったのは本来私でした。
頼くんは、私をかばったんです。

すべて私のせいです。申し訳ありません。
どうか、頼くんを責めないでください。お願いします」


そう言って、私も頭を下げた。


「……君が、吉良家の姫か」

「はい。俺が姫に任命しました」


凰成がそういうと、頼くんのお父さんは深いため息をついた。


「君たちには、なんの力もない。
君たちに謝られたところで、なにも状況は変わらない。

だから、君たちが謝る必要はない。
頭をあげなさい」


その言葉に、私も伊織くんも頭をあげた。


「とにかく、1週間頼は自宅謹慎だ」

「……はい」

「帰るぞ」

「はい」


頼くんのお父さんは私にも、伊織くんも見ることなく、頼くんを連れて行ってしまった。


< 315 / 419 >

この作品をシェア

pagetop