私と結婚してください。
「ん?なに?」
「紅茶、淹れるよ」
「え?あ、ありがと」
私はそういって、伊織くんの部屋に入る。
”ちょっと2人にさせて”と、凰成にアイコンタクトも送って。
「いつも朝は何飲むの?」
「んー、普通に牛乳とか」
「あ、チビだから?」
「は!?ちげぇし!!」
いつものようにいじったら、いつものように返ってきたから、ちょっと安心した。
すっごく寂しがってるかも、とか
不安になってるかもって思ってたから。
「おぉ、紅茶めっちゃある」
「好きなの飲んでいいよ」
「あ、本当?
なら私ももらおうっと」
伊織くんがどういうのが好きなのか全く知らないけど、とりあえず私の好みでアールグレイにレモンを入れた。
やっぱり朝は紅茶でしょ。温まるし、適度にカフェインも摂取できるし。
「ってか、なんで部屋入ったの?」
「え、だから紅茶淹れようと思ってだよ?」
「嘘だね」
「嘘じゃないって」
本当だよ。
別に、なにかできるわけでもない。
きっとそれを伊織くんが望んでるわけでもない。
ただ、朝のこの時間を共有できたらなぁって、それだけ。
「……そか」
「うん。
はい、レモン好き?」
「ん、好き」
「ならよかった」
私たちはとりあえずソファに座り、紅茶を飲んだ。
「……なんか、いつもそこに頼がいるから変な感じ」
「はは、そりゃ慣れないでしょうね」
なんて明るく返すけど、今度は伊織くんから明るい答えは返ってこなかった。