私と結婚してください。
「……頼、大丈夫かな」
「…心配だね」
「俺さ、頼とは物心ついたころからずっと一緒にいたし、神楽前の寮も頼と同室だったし、
正直、1週間も離れたことないから
よくわかんないんだけど、なんか不安」
「不安?」
「なにがって聞かれるとよくわかんないんだけどさ。
実際、希依ちゃんだってこうやってきてくれてるわけじゃん?
勉強だってわからないことあっても頼がいなくても凰成がいるし
遊ぶのだって、竜司も希依ちゃんもいる。
なにも困ることって実際ないんだけど、なんか不安」
…そう、だよね。
そこにいるのが当たり前だった人が急にいなくなっちゃったんだもん。
お母さん、みたいな存在なのかもしれない。
「早く頼帰ってこねぇかな」
「早いよ。まだまだだよ」
「わかってるわ!!」
「でもきっとあっという間だよ。
もうすぐ音楽のテストもあるし、今は私たちにできることするしかないよ。
バイオリンもさ、伊織くん苦手なら、頼くんが帰ってくるまでたくさん練習して、上達してたら頼くんびっくりするんじゃない?」
「…まぁ、そうだな」
「でしょ?
私にこんなこと言う資格あるかわかんないけど、頼くんが帰ってくるのも明るく待ってようよ。
今は私たちにできることしよ!
落ち込んでる伊織くんなんて似合わないにも程があるよ」
「う、うるせぇし!」
「ほら、紅茶冷めるよ」
「あ、おう」
「伊織くんの朝食、凰成と一緒にしちゃったからね」
「あ、ありがと。
そか、希依ちゃんがオーダーしてくれたんだ」
「いつも頼くんとやってたから。
まぁこういうのが好きかなーとは知ってたし。
じゃ、私はそろそろ戻るね。
凰成すぐいじけちゃうし」
「はは、確かに。
んじゃありがとね、ほんとに」
「どういたしまして。
またあとでね!」
私はそういって、伊織くんの部屋を出て凰成の部屋へと入った。
部屋に戻ると凰成はもうしっかり制服に着替えたあとで、カバンに荷物を詰めているところだった。
「あ、ごめん
遅くなったね」
「いや、別に」
着替えを出すとか、荷物の準備をするとか
なんなら凰成の腕時計を選ぶのも、私の仕事だったのにな。
この人は最近、あっという間にそういうのを自分でやるようになったから、最近私の存在意義がわからなくなってくる。
ま、嬉しい悩みでしかないんだけど。