私と結婚してください。



寮を出るとすぐ黒塗りの車が止まってて一瞬足が怯んだけど
この主人に無理矢理押し込まれて


━━━なんか、激しく場違いな店へと到着した。



「こん中から好きなやつで今全身着替えてこい。」


それはそれは高そうなお店。
レディースの服をずらっと囲むように並んでいて、その真ん中には主人が座るソファ、そしてサイドテーブルには主人の飲み物がひとつ。

私の横にはこの店の責任者。


なんなんだ、これ。


そして気になる、値札。


桁数ひとつ間違えてないかな?
大丈夫?合ってますか?



「お気に召されるものはございませんか?」


「あ!い、いえ!
逆に素敵なものばかりで私の身の丈に合っていない気がしていて…」


値段も、そしてデザインも
なっちゃって金持ちでちんちくりんな私にはちょっと…



「ったくしかたねーな。
じゃあ適当にそいつに合いそうなやつ一式持って着替えさせてきて」


「かしこまりました。」


結局しびれを切らした主人がこの女の人にそう指示をして私はそのまんま着替えることに…

……っていうか、この人絶対買い物は早い方だ。
だって私、まだ全然悩んでもない。

全部見たわけでもないもん。


「こちらをどうぞ。」


「えぇ!?こ、これですか…?」


「きっとお似合いですよ。」


試着室にかけられたお洋服を見て驚愕。
こんな服着たことありませんよ……

…でも、きっと着ないと先に進まないんだろうなぁ…




「お手伝いいたしましょうか?」


「あの…
……はい。すみません、お願いします…」


「かしこまりました。」


情けないことに、ファスナーが上がらない。
どうして背中ファスナーなんだ…

これ、みんなは一人で着れるもの?私が固いだけ?


「こちらを。」


背中ファスナーをあげてもらえばカーディガンを肩にかけられ、靴まで用意されていた。


「あの…似合っていますか?」


「はい、よくお似合いですよ。」


身長155センチと低めの身長に、見た目普通の高校生な私に用意されていたのは

薄いピンクのワンピースに、レースのカーディガン。


言っときますけど、私普段はTシャツ、ジーパンですからね。
そんな私がこんなのを着ていて似合っている気がしない。


嘘丸見えのお世辞で、全然素直には喜べない。



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