私と結婚してください。



部屋に戻り、歯磨きしながら棚からマニュアルを取り出す。
えーと、マップマップ…あったあった。

ホールは…最上階、か。
最上階…そういえばいったことないなぁ。
ずっとなんかの教室かと思ってた。


さっさと歯磨きを済ませ、髪の毛ももう一度とかしてから、荷物を持って凰成の部屋に入った。


「あ、支度終わった?」

「あぁ。ってか今日は希依が遅かったな」

「ちょっと場所がわからなくて。
頼くんもいないし、自分で調べなきゃで」

「…なんか、頼がいねぇと困ることばっかだな」

「今まで頼くんにどれだけ頼ってきたのかわかるね」


みんな、困ったらとりあえず頼くん。
なにかあれば頼くん。

伊織くんの姫なのに、私たちは頼りすぎてたな。


「そろそろ行く?」

「だな。
伊織にも声かけてくか」

「あ、そうだね!」


それから学校のバックをしっかり持って、また私たちは伊織くんの部屋のドアをノックした。


「なに?」

「一緒に行こ!
場所わかんないかと思って」

「…うん、助かる」


伊織くんはそういって、すぐにバッグを持って出てきた。


「今日体育あるねー」

「だな。ってか音楽もあんじゃん」

「うわ、そうだった。
あ、伊織くんバイオリン一緒にやる?」

「え、俺も?」

「うん、だって
頼くん戻ってきたとき、なんにも上達してなかったら悲しむよー?」


私がそういうと、伊織くんはなぜかふっと笑った。


「いや、いいや。一人でやる」

「え、そう?遠慮しなくていいよ?」

「いーや、遠慮する!
だって俺、凰成の下手な音聞きたくないし~」


そう言うのは本当にいつも通りの伊織くんで


「もうそんな下手じゃねぇよ」


凰成も伊織くんの頭をパシッと叩いていた。


「その成長具合見るのはテストまで我慢しとく!」


…あ、そうか
伊織くんはいつも頼くんと一緒。

だから、その凰成の成長すら、頼くんと一緒に見たいんだ。


「……伊織くん、そう言ってられるのも今だけだからね!
凰成本当に上達してるんだから!

最初の頃はひどすぎて頭抱えたけど」

「お前もだいぶひどいな」


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