私と結婚してください。



「急にどうしたの?」

「わかんねぇけど、伊織が急いで戻ってきてくれって。
なにがあったかはわかんねぇけど、今までそんなことなかったから」

「…どうしたんだろうね」


いったい、なにがあったんだろう。
…きっと頼くんのことなんだろうな。

今はそのことでいっぱいいっぱいだもん。





***


10分ほどで戻ってきた学校

まっすぐ伊織くんの部屋に行くと、そこには竜司くんとめぐのほかにも、なぜか先生もいた。


「ど、どうしたの…?」


これまた嫌な予感。
だって先生もいるんだもん…


「…頼のやつ、指輪返してきやがった」

「え?」


指輪、って
私の指にもついてる、これ…

これは確か凰成の姫になると決めたあの日、なんか変な機械で固定されたやつだ。

その指輪にはしっかり伊織くんちの家紋が入っている。


「…どういう、意味」

「これも一緒にさっき届いたんだよ」


そういって先生が出したのは『退学届』


「え!?どういうこと!?」

「手紙が同封されてて
神楽解体の話を聞いたって頼が…
自分が抜ければ、きっとその騒ぎはなくなるって…
頼が関係なくなれば、頼の親父さんはなにも言わなくなるだろうからって…」

「…それで、頼くんが学校をやめるってこと…?」

「……姫が、自分で神楽をやめるためには
自主退学しか道がないからな」


その凰成の言葉で、昔の私を思い出した。
あの時、凰成にそれを言われた。

それなりの理由がないとやめることができない神楽…


「…でも、伊織くんが姫を解雇したら、頼くんは理数科に戻れるんじゃないの?」

「頼の親父さんは頼が学校にいる限り、きっと口を出してくるよ。
それに…俺、頼を解雇なんて絶対したくない」


伊織くんに手に力が入ってる。
…言ってたもんね、このまま頼くんに会えなくなるなんて絶対嫌だって…


「とりあえず、これは俺がまだ持ってるから。
あとはお前らの頑張り次第だよ」


先生はそういって、退学届だけ持って部屋を出て行った。


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