私と結婚してください。



「あの、頼に会いたいんですけど!」


伊織くんは必至にそう頼んだ。


「悪いけど、頼には会わせられないよ」

「どうしてですか!?」

「頼がそう決めたからだ」

「……頼が?」

「あぁ。
先ほど、自主退学の届けを出した。

頼は、神楽解体の話を聞いて、自らその道を選んだんだ。
どうか神楽だけはつぶさないでほしいと、君たちを守るために頼は身を引いた」

「…なんで…」

「頼は、私のことをよく知っている。
自分が神楽から離れれば、私は神楽にもう手は出さない。

頼の退学手続きが済んだら、神楽を解体する話も白紙にする。
それでいいだろ?」


そういって、お父さんは門の中に入ろうとした。
でも、そんなお父さんを止めたのは、伊織くんだった。


「そんなん、絶対嫌です」

「…伊織くん、君はそれでも頼とまた会えるだろう?」

「それでも、絶対嫌です!」


そういう伊織くんに、お父さんは軽くため息を吐いた。


「…頼が、決めたことだ」


その言葉に、今度は私が動いた。


「…あなたは、それでいいんですか?」

「はい?」

「あなたは、頼くんがそういう決断をした意味がわかってるはずです。
本意ではないと気づいてるはずです。
本当は辞めたくないけど、私たちのために、神楽を守るために、自分が学校を辞めるって、辞めれば全てが解決するって思ったから退学を決断したって
それをわかっていながら、それを受け入れるのですか?」

「頼がそれを望んでるんだ」

「頼くんの一番の願いは今まで通り学校に通うことではないんですか!?」


絶対、絶対。
だって頼くん毎日楽しそうだったもん。
無断外出禁止でも、それでも私たちと出かけた理由は
みんなといるのが、楽しいから…

それだけじゃないの…?


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