私と結婚してください。



頼くんは私の言葉を聞いて、おじさんの前に立った。


そしてまっすぐ、頭を下げた。


「お願いします。私を神楽の一員として、学園を卒業させてください」

「…頼。本気か?」

「私は、あなたを尊敬しています。
それは以前から変わりありません。
そして神楽制度がどこまで必要性があるのか、私にはよくわかりません。

ですが、神楽がなければ
ここにいる希依さんと出会うことはありませんでした。
きっと神楽がなくても、私や伊織様、吉良さんたちはいろんなことを学ぶことができるかと思います。
…でも、もしかしたらそれは無理だった可能性もあります。

神崎さんを含め4人、いつも仲が良く一緒にいる時間が多かったため、神楽がなかったら結局4人の狭い世界で終わっていたと思います。
ですが、そこに希依さんが入ったことにより、私たちの世界はぐっと広くなったんです。

狭い世界で生きてた私たちの視野を広げたのは間違いなく、希依さんです。

私が無断で外出したのも、希依さんとでないと知ることがなかった世界を知りたかったから。
新しいことを知っていくことがこんなに楽しいものかと、感慨深いです。

…それなのに、私のせいで伊織様や、吉良さん、神崎さんの世界がまた狭くなってしまうのは、絶対にあってはならないことだと思いました。
伊織様も、希依さんとの出会いでいろんなことを知りました。
そのいろいろな可能性を潰したくなくて、私は自分が学園を辞めることに決めたのです。

でももし叶うなら、私もまたそこに入りたいです。
また神楽で、この方々と一緒に時間を共にしたいのです」


…頼くん


その頼くんの言葉に、伊織くんも立ち上がって頭を下げた。


「お願いします
頼を、神楽に戻してください。
お願いします!」

「…お願いします」


そして、凰成も立ち上がり、頭を下げた。
正直、凰成が頭を下げることなんてないから、それに私は驚いてしまっていた。

そんな私だけど、頼くんのお父さんの小さなため息に、ハッとした。


そして私も頭を下げようとした瞬間
おじさんの表情が緩んだ。


「もう、いいんじゃないでしょうか」


…え?


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