私と結婚してください。



その日の夜、私はお母さんに電話をした。


「ねぇ、お母さん
私進路どうしよう」

『え、今頃それ言ってるの?』

「なんか忙しすぎて忘れてたんだよね」

『そんなの、吉良くんと結婚して家に入っちゃえばいいじゃない』

「でも凰成はそんなこと一言も言わないし、凰成は私が大学に進むもんだと思ってるしさ」

『希依はなにかやりたいこととかないの?』

「なんにもないから困ってるんじゃん!
…まぁ、音楽学部があればそこ選ぶけど…かと言って音大ってのも本格的すぎて、今更頑張っても無理な気がしちゃって」

『音大ねぇ…』


それに、学費の問題もあるよね…
やっぱり音大ってお金かかるっていうし、椎依も音大目指すとなると、2人そろって音大入れたとしてもお金が…大変だよね…


『…いいんじゃない?音大。
希依も受けてみればいいじゃない』

「え、でも私もうバイオリンずっと休んでるんだよ?」

『それでも弾くことはやめてなかったじゃない。
大丈夫。希依のバイオリンのすごさは私が保証する!
だから、とりあえず受けてみればいいじゃない。

ダメならダメでほかを考えればいいじゃない』

「…なんか、楽観的じゃない?」

『それでも人生一度きりなんだから、やりたいことをやっていくのが一番よ!
希依、ずっとバイオリンやってきたんだから。自分を信じなさい?』


…自分を信じる、か。
まだ遅くないかな、私…


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