私と結婚してください。
バイオリンと賞状、練習メニューノートを持って、私は神楽へと戻った。
「え、はや」
「ただいま。
お母さんがまとめておいてくれて。
で、まぁ練習用にバイオリンも持ってきたの」
「…このノートは?」
「私がバイオリンに夢中だったころ、自分で決めた練習メニュー。
中学生の頃は本当にバイオリンが大好きで、今はないのが当たり前になっちゃったけど、当時の私はバイオリンなしの生活なんて考えられない程バイオリンばっかりやってたからさ
あの頃の気持ち思い出したら、このくらいはやらないとだめだよなって思って」
暇さえあればバイオリンだった。
あの頃は私がバイオリンから離れるなんて、想像してなかったな…
「希依が音大受かったら大学からは別々だな」
「そうだね」
「…希依も法学部くりゃいいのに」
「ふふ、寂しい?」
「…じゃっかん」
あれ、素直だな。
「落ちたら法学部くれば?」
「今から落ちた時のこと考えないでよ」
「…じゃあ、受かったら
希依は将来、なにになんの?プロ?」
「んー…
私は指導者がいいな。
凰成に教えて思ったの。
自分のおかげで誰かがうまくなるっていいなって」
嬉しかった。
あの凰成が、私の指導をちゃんと聞いて、そしてちゃんと上達していったあの姿が。
「だから私は受かったらコンクールとかで実績を作って、教室を開きたいなって。
まぁできれば、だけど。
無理なら無理で、適当に自分の弾ければそれでいいよ。
正直バイオリンのことは大好きだけど、私の将来の中でバイオリンって優先度ちょっと低めだし」
「え、そんなんで音大受けるのかよ」
「だってほかにやりたいことってないんだもん」
私の今の将来の夢…というかやるべきことは高校卒業までに籍を入れること。
もしそれを凰成が叶えてくれるなら、凰成のために生きていきたい。
ただそれだけなんだ。
だから別に、大学への深い思い入れがないのかもしれない。