私と結婚してください。



…この音、久しぶりだな。
チェロと弾くのは何年ぶりだろう…

そして、この曲を弾くのは何年ぶりだろう…


その音に、私の音を重ねる。


もうずっと弾いてこなかった曲なのに、覚えてるもので
私の指はすらすらと動く。
素人の私に、チェリストさんが合わせてくれるから
たった数分間のこの曲がすごく気持ちよかった。


最後のロングトーンを柔らかく終わると、会場には拍手がちらほらと聞こえてきた。


「あの、やっぱりクリスマスといえばボレロじゃないですかね!」


私が無茶を言ったら、チェロの方は笑顔を見せて
ポン、ポン、ポン、と音を出してくれたから
それに、また私の音を重ねる。

弦楽器しかいないから迫力には欠けると思うけど
それでも、バイオリンとチェロがいればそれなりに形になるから。

…そういえば、去年クリスマスで椎依と合わせて弾いたな、この曲…
あの頃は、まさか1年後にこんな大きな会場で、こんな大勢の前で、しかもこんなすごい方々の前で、私のソロを演奏することになるなんて、思いもよらなかったな。


凰成と出会って、本当に環境が変わったもんね…


< 406 / 419 >

この作品をシェア

pagetop