私と結婚してください。
俺を変えたのはあいつだから---凰成side
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「まったく…これだから庶民は…」
俺の隣で一華が、そんなことをつぶやいた。
まぁ、確かにパーティーに招待されといて倒れたやつの代わりにバイオリンを演奏するなんて聞いたことない。
それが俺の彼女だと、このあとみんなに紹介するなんて
この会場全員が知る由もないんだろうな。
「凰成は本当にあんな子でいいの!?
笑われるわよ!?」
本当、俺もそれ思うわ。
…でもやっぱ俺はあいつがいいんだよな
「なぁ一華。
あいつ、楽しそうだろ」
「え?」
「俺はバイオリンなんて嫌いだったし、この年になるまで興味すらなかった。
…でも、あいつが楽しそうに弾いてるの見て
弾けるようになったらこんな楽しいのかって興味沸いたんだよ」
あいつの楽しさを知りたかった。
バイオリンが弾けるようになったらどんだけ楽しいんだろうって、知りたくなったんだよな、あの日…
まぁ、結局弾けるようになっても俺にはその楽しさはわからなかった。
でも、希依が嬉しそうだったから
俺はその顔見れただけよかったんだけど。
「一華の言うことも分からなくはない。俺も、お前みたいな考えあったし。
でも、俺はあいつと知り合って変わった。ってか
あいつがいなかったら、たぶん俺はいまだにつまんねぇ人間だった。
あいつがいなかったら、俺の世界は狭いままだったよ。
お前みたいにな」
俺はそういって、希依に向かって歩き出した。
一華みたいな考えでいたら、たぶんこの先も楽に生きていけたんだよな。
本当、俺もそう思うよ。
でも、そういう常識ぶち壊してもあいつといたい気持ちもあるし
あいついて知ってくあいつの世界の常識も楽しくて仕方ねぇし
いろいろ壁にぶち当たっても、それを乗り越えてくのって楽しいんだなって、あいつと知り合って知ったから。
いろいろあったもんな。
あいつのテストの問題とか、あいつのケガとか、あいつを竜司に取られたりとか、俺のバイオリンの問題とか、この前の頼んちのこととか
なんか思い出せないくらいいろいろあったけど、いろんなことあいつと乗り越えてきたんだもんな。
「希依」
希依のその素晴らしい演奏にこの会場が大きな拍手で包まれたころ、俺は希依に手を差し伸べた。
「あ、凰成」
「もう代わりきたんだからいいだろ。
そろそろ、お前もこっちの役目を果たせ」
「え?」
希依は意味不明って顔したけど
俺は希依の手を握って、希依をステージから降ろす…なんてことはせず
「え、ちょっ…」
俺も一緒に、ステージに上がった。