私と結婚してください。
「あ、あの車?」
「そう」
わちゃわちゃしながら理数科専用の門に向かえば、外には白い車が一台。
「凰成んちの車は全部白いんだよ~」
ふーん、そうなんだ。
まぁあんま興味もないけど。
っていうかこいつんちの車か。
なんか…金持ちだからセダン車かなーと思ったけど普通にミニバン。
見慣れているやつだ。
「…あれ?昨日は黒の車だったよ?」
「え?そうなの?」
「あれは試乗車だ。
俺んちが買った訳じゃなくて勝手に持ってきたやつ。
俺で試したんだろ、たぶん」
な、なんだそれ……そんなことある?
普通ではないよな……
……でもやっぱり金持ちだから、ちゃーんと運転手がドアを開け始め、しかも頭を下げてる。
なんだこれ。
……ん!?
「え、なにこれ!!」
蓋を開けてビックリ。
中は見たこともないくらい広々シート。
え、なに?飛行機ですか?
全席にテレビがついてるし…
な、なんかさ
車ってシート普通繋がってない?
なんでどのシートも独立してんの?
「後ろは4人しか乗れねぇからお前が前な」
「は?え、なんで?」
「この中で死ぬならお前が一番損害がないから。」
・・・はい?
「それとも、お前は俺ら御曹司を押し退けて後ろに座る価値があるのか?」
……ねぇ、待って。
え、価値?損害?は?え、そんなことで座席を決めるの?ねぇ。
お前は私をなんだと思ってるんだ!!
「文句がないならさっさと乗れ。」
そういって、吉良凰成はしっかり一番後ろに乗った。
「高梨さん、よろしければ私が交代いたしますよ。」
「あ、ううん。いいのいいの。
私はどこでも大丈夫だから。
頼くんは伊織くんの隣座りなよ。」
「……そうですか?」
「うん!本当に大丈夫!
ありがとね。」
そう、私は別に助手席でも構わない。
なんなら私は助手席が好きだ。
……でも
あいつのあの言い方はなんなんだ!!
そりゃ私はどうせそこそこの金持ちだよ。
お父さんの会社だって小さいよ。
でもさ
人間の価値ってそれだけじゃないから!!!
……なんて、あいつにはわからないんだろうな。