私と結婚してください。
主人の私的命令。
私が助手席に乗ればすぐに発車して、後ろではすぐに伊織くんが元気に話し始めて
それに神崎竜司が笑いながら答えて、頼くんも話に加わる。
━━そして、それに吉良凰成も笑う。
……なんかここ、私の場所じゃない気がするな。
「到着いたしました。」
へ?え、もう?
ここ?
「高梨さん、降りましょう。」
後ろから頼くんの声が聞こえて、気づけば運転手さんはもう後ろのドアを開けていて
頼くんが降りていた。
…っていうか、やっぱり私のドアは開けてもらえないんだな。
開けてほしいわけではないけどさ。
「よいしょっと」
「ババァかよ」
……またこいつかよ。
こいつは私をイラつかせる天才かよ。
ったく……
「早く行くぞ」
「はいはい」
前を見れば頼くんがもうすでにドアを開けてて伊織くんが中に入っていた。
神崎竜司に続いて吉良凰成も入り、最後はもちろん私。
レディワーストとか無縁だね。
別にいいけどさ。別にいいんだけどさ!!
ここまで雑に扱われること今までなかったから虚しくなるよ……
「あれ、高梨?」
……え?
「あ、やっぱ高梨じゃん!」
「速水じゃん、なにしてんの?こんなとこで」
私も最後にお店を入ろうとしたけど、中学の頃から仲がよくて去年も同じクラスだった速水が歩いてきて
お店のドアは私が入る前に閉まった。
「買い物だけど!
ってか高梨もそんなおしゃれしちゃって珍しいな~
最初椎依ちゃんかと思ったわ!」
「うっさいわ!
私もたまにはオシャレするんだよ!」
「はは、まぁやっぱ仕草とか喋り方が高梨だもんな。
椎依ちゃんと違って。」
「どうせ可愛くない女ですよ。」
椎依のことが大好きな速水だけど、こいつは椎依は椎依、私は私とはっきり区別してて
椎依と私を比べたりするけど、こんな私を悪いとも言わないし
なんていうか、他の男と違って私を『高梨姉妹の残念な方』としないから好きだ。
私らしいところを好きでいてくれるこいつが、私も好きだ。
「誰」
そんな楽しい会話も束の間、ドアが開いて吉良凰成が思いっきりこっちを睨んでいた。
「友達。
私はビリヤードできないし、勝手にやっててよ。」
「は?アホか。
お前はお前の仕事があんだろ。
さっさとこいよ。」
私の思いは儚く散って…
「ちょ、待っ…
ごめん速水!また連絡するわ!」
腕を捕まれて店に引きずり込まれた。