私と結婚してください。



「待てよ」


だけどやっぱり、こいつはそれすら許してくれない。


「……まだ、なにか?」


なんかもう、わかんないけど泣きそうで

私にとっては大事にしたかったファーストキスがこんな形であっさり奪われて
悔しくて情けなくて自由すらなくて

もう、涙が溢れてきそうなのを耐えるのに必死だった。


「凰成」


「……は?」


「俺は『こいつ』でも『あんた』でもねぇ。
呼び捨てでいい、凰成って呼べ。

じゃなきゃまた罰を加える。」


「……わかった。
そのくらいお安いご用です。

…あ、明日は何時に起きますか?」


「6時半」


「わかりました。おやすみなさい」


「待てよ」


……なんだよ、しつこいな…


「まだなにか用ですか?」


「そっちの部屋にテレビねぇよ。」


「……だから?」


「これからお前の好きな歌手が出るって。
見ねぇの?」


「・・・え!?み、見る!!」


「なら座れば。
勝手に使えよ、テレビ」


そういって吉良、じゃなくて凰成は私の分のティーカップまで出してきた。




……なんなの?優しいの?俺様なの?ドSじゃないの?
よくわかんない…。



「…でも、なんで私の好きな歌手まで知ってるの?」


「お前の妹から聞いた。
お前の日常の習慣が書かれた紙まで渡されてな。

とくに希依はその歌手だけは絶対に譲ってくれないから、って」


「……そっかぁ…」


椎依、か……
ふふ、よくわかってんじゃん。


「……あの」


「あ?なんだよ」


「…ありがとう。
それと、言い付け破ってごめんなさい。」


「……ふっ、変なやつ。
早く座れよ。始まるぞ?」


「うん!」



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