もう一度、あの恋を。

『え?え!?何事!?』


と焦り出した時、ピタッと結乃ちゃんは足を止めた。


誰も来ないような校舎の隅で何の話をするのかビクビクしてたら、


「うちさ、泉からバトンを貰うんだけど!どうすればいい?緊張で失敗しそうだよー!!」


と今にも泣きそうな顔で言った。


泉とは結乃ちゃんの好きな人でサッカー部に入っている泉暁(いずみあきら)のこと。


結乃ちゃんは焦りすぎて、私の腕を強く掴んでいた。


「だ、大丈夫だよ!焦んなくても、普段通りやれば出来るから!」


って私は何も根拠なく言ってどうするの!!!


でも、結乃ちゃんは、


「本当に!?大丈夫?普段通りに出来る?」


「結乃ちゃんは本番に強いタイプだもん!!練習では出来たんだよね?」


「ま、まぁ、練習ではバトンミスはなかったけど…」


「なら大丈夫だよ?気にしたって仕方ない!」


「そうだね。紗那の言う通りだね。気にしたって仕方ない!」


とパッと笑顔になって言ってくれた。


結乃ちゃんの笑顔を見て私も安心した。


ハードルの招集がかかったので、招集場所へ行こうとすると、


「あ、紗那も何か聞きたいことがあればいつでも言ってね!」


笑顔の結乃ちゃんを見て、私は「ありがとう」と返そうと思ってたのに、


「どうやって好きだって気づいたの?」


と聞いてしまった。


結乃ちゃんが驚いた顔をしている。


自分でもびっくりした。


「何言ってるんだろね。ごめん、招集かかったから行くね!」


その場から早く逃げたいという気持ちでそう言って走った。


「紗那!うちはね、その人を笑顔にしたいなって思ったから気づいたよ!!」


結乃ちゃんが走ってる私に聞こえるように叫んでくれた。


私は笑顔で「ありがとう!」と返した。
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