片想いイズム


「なあ、木崎。教科書見せて」

授業が始まってすぐに隣の園田がツンツンと私の腕を突っつく。

本当に園田はなにしに学校に来てるんだってぐらい教科書を忘れる。課題も全然やらないし、すぐにノート写させてって言うし。

だけどそれは私に限ってのことじゃない。

園田は隣の席になった女の子には必ずそう言うし、だからたまたまこの前の席替えで隣になった私に頼んでいるだけだ。


「おい、シカトすんなよ」

ちょっと強めにツンッとされて、私はムッとした表情で園田を見た。


「相変わらず冷たいな、木崎は。教科書忘れたぐらいで怒るなよ」


感情的になるのは嫌いだし、大声を出すのも愚痴を言うのも疲れるからイヤ。

でもここははっきりと「ふざけるな」と言ってしまいたい。


私が教科書を貸してと言われたらムッとしてると思ってんの?それ本気で言ってんの?

園田は勝手に私との机の距離を詰めて教科書を真ん中に置く。

距離感を間違えたのか椅子を近づけすぎたのか、園田が動くたびに私と肩が当たる。

後ろの席の人からどう思われてるかな。

あのふたりちょっと近くない?なんて、女子に妬まれたらどうしよう。

それはないか。相手が私だもん。

顔は中の下だし、けっこう地味だし、言いたいことは言うけど社交的じゃないし。園田を囲んでる女子から見たら私なんて鼻で笑われてそうな存在だよ。


それなのにさ、

なんであの日、私にキスなんてしたの?
< 2 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop