社長、僭越ながら申し上げます!
私は訳がわからないまま

笑顔の社長に促されて応接セットのソファーに座ると
秘書らしき女性が珈琲を出して部屋を出ていった

「あの……社長…」

「ん?」

社長は先程からニコニコと私を見ている

「私、何かやらかしましたでしょうか…」

「やらかす……あー、ん?」

きょとんとした社長に私は焦ってしまう

(呼ばれた理由が分からないなんて、ダメなんだろうな……どうしよう)

「あの、ですから私は何をしてしまったんでしょうか…」

「んー?強いて言うなら泥棒?かな」

「窃盗!!そ、そんな私は御天道様が見ても恥ずかしくないように生きています!」

思わず叫ぶと社長は唖然として……数秒後、笑い出した

「あはははは!」

お腹を抱える社長を目の前に私は青くなってしまう

(まさか……窃盗の容疑がかけられて居るなんて…)

もう、この会社に居られないかもしれない…

「面白いなぁ乃菊は…」

「…は?」

今、社長は私の下の名前を呼んだ…よね?

「違うよ乃菊…君は僕の気持ちを盗んだんだよ」

「は?い?」

どこのタラシの男の歯の浮く台詞ですか?
しかも意味が分からない

社長を訝しげに見ると…
社長が私の手をテーブルの上で握った

「ひっ!」

「眞山乃菊、君は明日から社長室勤務ね!以上っ」

黒曜石の瞳が私を捕らえて離さない

「は?」

「社長命令だから!はい、戻っていいよ?」

「は、は、はあ…」

「今日の就業後、またおいで?待ってるから』

どこぞのアイドルのようにバチンとウィンクをした
社長は大きな目がキラキラしていて…

(…似合いすぎですから…)

「は…い」

私は熱に浮かされるように自然に返事をしていた







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