社長、僭越ながら申し上げます!
「どういう事よ!乃菊!!」

「私が聞きたいわよー!」

私がデスクに戻り放心状態でいると…

お昼休み前に急に辞令が出て、社内に私の異動が伝えられた

それを見たらしく、
社内唯一の友人のナナが部署に飛び込んできた

羽交い締めされそうな勢いで抱きつかれ
さらには肩に手を置かれてガクガクと揺らされた

「私も訳がわからないの!」

確かに秘書検定も一応2級は持ってるけれど、別にそんな人は沢山、この会社にいるだろうし
地味で普通な見た目少々記憶力が良いくらいで
何も取り柄はない


華やかな雰囲気の役員秘書たちと比べて
見るからに見劣りする容姿の私…

「社長って、ものすごく怖いんでしょ?」

「え?かなり笑顔だったけど…」

『乃菊ー!』なんて笑ってたけど……も?

「派手な顔して遊び人みたいだけど、
ストイックで厳しくて、怖い人よ?
乃菊はまだ1年目だから知らないかもしれないけど……」

(そ、そうなのー!!)

ナナが私の頭をわざとらしい優しい声を出して撫でた

「あらー可哀想……いじめられちゃうの?乃菊…」

「ちょーい!ナゼよ、何故いじめられるの決定?」

焦って聞いたら…ナナはニヤリと笑った

「あら、虐げられる……の間違いかしら…」

「やめてー!!」

その後もさんざんからかわれ、
社長についての怖い噂を吹き込まれたのちに

…就業後、再び社長室へ向かった



またしてもフロアの入り口で綺麗な秘書のお姉さま

「お疲れ様です……」

頭を下げて通りすぎようとしたら
ものすごく低い声が聞こえた

「そんな湿気た顔でこのフロアに入るんじゃないわよ」

(へ?!)


見れば秘書のお姉さまは艶やかな笑顔で
どうぞ?と手で誘導しているだけだ

「は、い…」

聞き間違いかな?と背を向けると
再び聞こえる

「いきなり社長付きだなんて
調子に乗ってんじゃないわよ?」


そっと振り向けば……笑顔なのにひきつったお姉さまの目元と口許に気づいてしまった…

(…ひょえー!!怖いよ……)

私は足早に通路を抜けて社長室をノックした



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