気まぐれ猫くんの手懐け方

猫くんのきょるんとした瞳が、私を見る。


「どうって……」


ごくり。

唾を飲み込んだ音が、やけに大きく聞こえた。


「隣の席の人」

「!!?」


パリーン……と、

私の中で何かが音を立てて壊れた。


梨乃はわなわなと肩を震わせている。


「あのねえ……」

「え、なに、ダメ?」

「そんな軽い気持ちで、この子のこともてあそばないでくれる?」


今、私からは梨乃の背中しか見えていないからわからないけど。

きっと今梨乃は、ものすごく怖いオーラを出しながら笑ってる。


猫くんの胸ぐらをつかむ勢いのその手は、ワキワキと握りしめられたり開かれたりで、行き場のない様子だ。



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