気まぐれ猫くんの手懐け方
そんな状態の梨乃を見た猫くんはため息をひとつ吐いてから、頬杖をつく。
「いや、俺気まぐれだし」
とりあえずひなたぼっこさせて、と言いながら、再び窓の方を向いて突っ伏してしまった。
……な
なにそれ。
音を立てて壊れた何かが、今度はガラガラと崩れていく。
わくわくして、ドキドキして、胸がいっぱいだった少し前までのあの感覚は、もうすっかりなくなって、文字通り空っぽだった。
「ちょ、それってどういう」
「梨乃、もういいよ」
さらに食ってかかる梨乃を、袖をつかんで制止する。
「陽愛……!? あんた、それでいいの!?」
「もうすぐ、HR始まるし、大丈夫だよ」
「……わかった」
梨乃はまだ言いたいことがあるかのように一度猫くんを見てから、そこまで出かけた言葉をこらえるように自分の机に戻っていった。