気まぐれ猫くんの手懐け方

「…ほら、また進んだよ」

「っ」


私から遠い方の、左手を伸ばして教科書のページをめくる猫くん。

そのせいで猫くんの体がまた少し私に近づいて。


太陽の日差しをめいっぱい浴びたその髪からは、ふわっと柔らかい猫くんの香りが漂ってきて、私の鼻をくすぐった。


や、やばい。


猫くんのこと意識しすぎてお腹空いてきた……。


「……ん!?」


『お腹空いてきた』!?


私は、自分が空腹状態にあることに気づき、右手でお腹をおさえる。

え、待って。

やばいよこの状況はやばすぎるよ…!!?


ちらりと時計を見てお昼休みまでの時間を確認する。

…あと15分…って、結構あるじゃない!!


一気に私の意識は猫くんから自分のお腹に向いてしまっていた。


もはや授業どころじゃない。



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