気まぐれ猫くんの手懐け方
結局この日は、一度も陽愛と目が合わないまま
もちろん言葉も交わさないまま放課後を迎えた。
「………」
話しかけられるような雰囲気じゃないし、俺も俺でむしゃくしゃしていたのもあって
そのまま陽愛に声をかけずに教室を出た。
生徒玄関まで来て、上履きからローファーへと履き替える。
そういえば、ここで初めてあいつとキスしたんだっけ。
あのときの顔といい、次の日の動揺っぷりといい。
ほんと、飽きないよお前は。
「……俺のなのに」
陽愛は、俺のだ。
陽愛は、俺だけに笑顔見せてればそれでいいのに。
そこまで思って、頭の中に浮かんでくるさっきのあいつの泣き顔。
ズキンと、胸が痛んだ。