気まぐれ猫くんの手懐け方

「……ばかひな」


下を向いて、前髪が邪魔なことに気づく。


「……あ」


授業中にピンを外したまま、つけるの忘れて出てきてしまったようだ。

俺のアイデンティティーを忘れるなんて…。



「それもこれも陽愛のせいだ」



確か、陽愛はまだ教室にいるはずだ。


声、かけてみよう。


なんて言おうか。


『昼はごめん』?

それとも

『いつまでむくれてんの?ブス』?


後者の方が俺っぽい?

でもまた陽愛が泣くかも知れない。


「……めんどくさ~…」


なんて声をかけようか考えているうちに、いつの間にか教室が見えてきた。


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