気まぐれ猫くんの手懐け方
私の好きな人
これくらいなら
その日の帰り道。
私の隣には猫くんがいた。
「チャン陽愛」
「なあに? 猫くん」
「ねえ、好きな人って誰?」
予想通りの質問が隣から飛んできて、笑いそうになってしまったのを隠すように、猫くんから視線をずらし口元を手で隠す。
だって笑ったら、猫くん怒りそうで。
「猫くんったら、さっきから何回目? その質問」
「いいから答えて。誰?」
唇をとがらせて、少し不機嫌そうなのが声色から伝わってくる。
そんなに気になるのか…。
「秘密だよ~」
そして数分前と同じように、流すようにして変わらず同じ答えを返す。