気まぐれ猫くんの手懐け方

私は、さっきの放課後での出来事を思い出していた。


――今の俺の言葉、否定しないで……


まさか、あんなふうに言ってくれるなんて、思ってもいなかった。

だって今までずっと遊ばれてると思ってたし

からかわれてるだけだって思ってた。

私の反応を見て、面白がっているだけなんだって思っていた。


……それなのに。


あんな、必死な顔であんなこと言われたら。


「ねえ、そいつ……その好きな奴は、俺よりかっこいい?」


ずいっと不機嫌そうな顔を近づけて、なおも聞いてくる猫くん。


「どうかなー」なんてまた流しながら、心の中では猫くんに何度も「ごめんね」って呟く。

ごめんね。

ごめんね猫くん。


私、なんにも見えてなかったし、見ようともしてなかったんだね……。


猫くんの本当の気持ちを

私の勝手な思い込みで見ようとしてなかった。

私自身が、これ以上傷つかないように勝手に思い込むようにしてたから。

だから、猫くんの本当の気持ちに気づかなくて、わからなくて。


だから、ごめんね。

これからは、ちゃんと見るからね。

猫くん、ごめんね。


「ねえ、チャン陽愛」

「なあに猫くん」


……ていうかそろそろそのチャン陽愛呼びやめてくれないかなあ……。

中国の人見たいじゃん、もう。



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