気まぐれ猫くんの手懐け方

少し時間をあけて、少しずつ、少しずついこうと思っていたら。

逆に、今度は俺自身が、伝えることを少しずつ怖くなっていって。


「……え」


「……駅前10時、集合だから!!」



それだけ陽愛に伝えて、逃げるように教室を出た。

そして、廊下の壁に背中をつけて、天井を仰ぎ、体中の酸素を一気にはき出すように息をはいた。


自分の胸に手を当てたら、どくんどくんとものすごいスピードで音を立てていた。


好きって自覚した途端、こんなにも恥ずかしくなるものなのか。

こんなにも、感情が高ぶってしまうものなのか。


「……かっこわる…」


くしゃりと前髪をつかみ、ぽつりとこぼしたとき。


「………まって」


今日は金曜日。

日曜日まで今日を入れてもあと3日間しかない。


「………っ」


さっきまで熱くなっていた顔は、いつの間にかサーッと音を立てて青くなっていた。



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