気まぐれ猫くんの手懐け方

考えてみれば俺、陽愛のことなにも知らないんだな。


……あいつ…


「犬っころとは、どこ行ったんだろう……」


ベッドへと投げたケータイをちらりと見るが、すぐにブンブンと首を振った。

やめろ、やめろ、バカなことは考えるな、犬っころに聞くとかどうかしてる。

というか、俺のプライドがそれを許さない。


「……あ」


目を閉じたとき、パッと顔が浮かんだ人物がいた。


中学の時、割と仲がよかった奴。

風の噂によると、女と一生縁のなさそうなあいつに、なんと最近彼女ができたらしい。


「……」


ゴクリと固唾を飲んでから、手に取ったスマホを操作する。

通話ボタンを震える指でそっと押した。


…~♪…~♪


『……あ?』

「!」


何度かのコールで、電話の向こうから不機嫌そうな声がした。


< 214 / 273 >

この作品をシェア

pagetop