気まぐれ猫くんの手懐け方

「玲央と、来たんだ、ここ」


力なく、言葉が口をついて出る。


「そうなの、悔しくて悔しくて悔しかったか…ら…」


俺の様子に気づいたのか、陽愛の声がだんだん小さくなる。

……そっか。

さっきまで、純粋に楽しんでいたはずなのに。

犬っころの名前が出てきた途端、もやもやが瞬く間に俺の心を覆っていった。


きつい。


また、ひどい言葉たちが出てきてしまいそうになるのをぐっとこらえる。


けど


だけど。



「……やってみな」



無理矢理口角を上げて、陽愛に向かって挑発するようにそう言った。





…陽愛を、泣かせちゃダメだ。

そう、思ったから。



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