気まぐれ猫くんの手懐け方

必死に記憶をさかのぼるも、思い当たるものがない。

ああでも、一緒にGROUND1に遊びに行った時のことだろうか。

あれを梨乃は『デート』と言ってたっけ。


「その時は、何着ていったの?」

「へ?ジャージだよ?」

「バカなの?」

「出た、『バカなの?梨乃feat.猫くん』」


クッションをギュッと抱きしめる。


「わかんないんだもん。あのときは服装のこともお化粧のことも何も気にしてなかった。なのにどうして、今更こんなに焦ってるんだろうって」

「かわいそうな玲央……」

「えええ、だって仕方ないでしょ~…」


それより、と、私は話を戻す。


「梨乃様、この通り。本日一泊させてください」


私はクッションを自分の隣にそっと置き、代わりに両手の指先を合わせて頭と共に下に下げた。


「そして明日、私にお化粧を施してください」

「……じゃあさ、陽愛」

「はい、なんなりと」



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