気まぐれ猫くんの手懐け方

「猫くん、やきそばとお好み焼きあるけど、どっち食べたい?」

「んー…どうしようかな……」

「あ、たこ焼きもある!!」

「陽愛、太るよ?」

「う……」


だって、ついつい出店の文字が視界に入ると、どうしてもそこに行きたくなっちゃうんだもん。

こういうお祭りに、家族以外の人と来たのが正直初めてだったから、余計にはしゃいじゃっている自分がいて。

それに気づいて、恥ずかしくなった私は、つい下を向いてしまった。


そういえば、今日お母さんに太ったんじゃない?って言われたばっかりだったんだ……。



「私、どれもやめておこうかな……」

「……陽愛」

「え……えっ?」


名前を呼ばれて顔を上げた瞬間、猫くんにぐいっと手を引っ張られる。


「全部食お! せっかくだし楽しまなきゃ!」

「……っ」


何言ってるの、猫くん。

私、もうすでに楽しんでるよ。




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